多焦点眼内レンズが向かない人・向いている人の特徴は?白内障手術の注意点も解説
2024年7月1日
多焦点眼内レンズを用いた白内障手術は、遠方視と近方視の乱視、老眼両方を回復させる有効な治療法です。
しかし、多焦点眼内レンズ特有のデメリットもあるため、必ずしも全ての方に適しているわけではありません。
自身に適した白内障手術を行うためには、多焦点眼内レンズが向いているのか、または向いていないのかを把握することが大切です。
併せて、多焦点眼内レンズの注意点を理解しておけば、より安心して白内障手術を受けることができるでしょう。
この記事では、多焦点眼内レンズが向かない人・向いている人の特徴、白内障手術の注意点について解説します。
多焦点眼内レンズを利用した白内障手術を検討している方は、ぜひ最後までご覧ください。
多焦点眼内レンズが向かない人の特徴
多焦点眼内レンズは、近くと遠くを同時にクリアに見ることを可能にする眼内レンズです。
しかし、眼内レンズが全ての方に適しているわけではありません。以下のような特徴を持つ方には、多焦点眼内レンズが推奨されない場合があります。
- 強い乱視がある
- 他の目の病気がある
- 見え方に対して神経質
- 夜間に運転することが多い
- 白内障がほとんどない
ここでは、それぞれの特徴について詳しく見ていきましょう。
強い乱視がある
強い乱視を持つ方には、多焦点眼内レンズが必ずしも最適な選択肢とは限りません。乱視は角膜の歪みによって引き起こされ、これにより光の焦点がぼやけることがあります。
ただし、多焦点眼内レンズの中には「TORIC(トーリック)」と呼ばれるものがあり、このレンズであればある程度の乱視矯正が可能です。
非常に強い乱視の場合はトーリックでも矯正が困難なこともあるため、強い乱視がある方は主治医に一度相談することをおすすめします。
他の目の病気がある
白内障以外の目の病気を持つ方も、多焦点眼内レンズの使用が向かない場合があります。
例えば、緑内障や加齢黄斑変性症などの病気は視野や視力に影響を与えるため、多焦点眼内レンズの効果を最大限に活用できない可能性が高いです。
これらの病気は、眼内レンズを通じた光の分散に影響を及ぼし、見え方に不具合を引き起こすことがあります。
そのため、他の目の病気がある場合は主治医とよく相談し、個々の状態に適した治療法を選択することが重要です。
見え方に対して神経質
見え方に対して神経質な方は、多焦点眼内レンズを選択する際に注意が必要です。
多焦点眼内レンズは、遠近両用の機能を提供するために特別な設計が施されており、このために一部の方は視覚の適応に苦労することがあります。
特にぼやけやハロー・グレア(光の見え方に違和感が出る症状)に敏感な方は、多焦点眼内レンズの副症状が日常生活に影響を及ぼす可能性があるため、手術前に十分な説明と相談を受けることがポイントです。
夜間に運転することが多い
夜間に車を運転する機会が多い方も、多焦点眼内レンズの使用は向いていません。
多焦点眼内レンズを使用するとコントラスト感度が低くなるため、「光がぼやけて見える」と感じる方が一定数います。
特に夜間の運転は、光源からのハロー・グレアがより顕著に現れる傾向にあり、これが多焦点眼内レンズを使用する方にとって大きな問題となるケースがあります。
運転中の視覚障害は安全性を低下させる可能性があるため、頻繁に夜間運転を行う方は他の治療法を検討するか、この種のレンズに適応するための追加的な訓練を行う必要があります。
白内障がほとんどない
白内障の症状がほとんどない初期段階の方は、多焦点眼内レンズの使用は推奨されません。
白内障が進行していない状態では、視力に大きな問題が発生していないケースが多いため、多焦点眼内レンズによる手術の恩恵を受けられる可能性が低くなります。
多焦点眼内レンズで光を分割することで、かえって見えにくくなる可能性すらあります。
そのため、白内障の症状が軽微である場合は、多焦点眼内レンズを使った手術と併せて別の治療法も検討しましょう。
多焦点眼内レンズが向いている人の特徴
多焦点眼内レンズを使用した白内障手術は、遠方視と近方視を同時に矯正し、メガネやコンタクトレンズの必要性を減少させるなどの利点があります。
多焦点眼内レンズを採用した手術は、主に以下のような方に向いています。
- メガネやコンタクトレンズから解放されたい
- 乱視矯正したい
- 手術後の副症状を許容できる
ここでは、それぞれの特徴を詳しく解説します。
メガネやコンタクトレンズから解放されたい
日々の生活でメガネやコンタクトレンズの依存から解放されたいと感じる方には、多焦点眼内レンズの使用が適しています。
手術を受けることで、近くと遠くのどちらにも焦点が合うようになり、多くの場合は視力矯正器具なしで日常生活を送ることが可能になります。
特にアクティブなライフスタイルの方や、仕事で細かい文字を頻繁に読む必要がある方にとって、多焦点眼内レンズを使用した手術は大きな利点をもたらすといえるでしょう。
乱視を矯正したい
乱視を矯正したい方にも多焦点眼内レンズは推奨されます。乱視の方が手術を受ける場合、特別に設計された眼内レンズを使用し、乱視と遠近の両方の視力問題を矯正します。
これにより、より鮮明な視界を得ることができ、日常生活の質を向上させることが可能です。
乱視があることで生じるぼやけや歪みから解放されたい方にとって、多焦点眼内レンズを用いた手術は検討すべき選択肢といえるでしょう。
手術後の副症状を許容できる
多焦点眼内レンズを使用した手術では、ハロー・グレアなどの副症状が発生する可能性があるため、許容できる方が向いています。手術後の主な副症状は以下の通りです。
- ハロー・グレア
- コントラスト感度の低下
- 多焦点不耐
多焦点眼内レンズを使用した手術を受ける場合、これらの副症状を考慮する必要がありますが、手術を受けたからといって副症状が必ず発生するとは限りません。
また、最新の多焦点眼内レンズは副症状が比較的軽減されているほか、多くの方は時間が経つにつれて副症状が軽減される傾向にあります。
多焦点眼内レンズを使用した白内障手術の注意点
多焦点眼内レンズを用いた白内障手術は、遠近両用の視力を回復させる有効な治療法です。ここでは、それぞれの注意点を詳しく解説します。
単焦点眼内レンズに比べて手術費用が増す
一般的に多焦点眼内レンズを使用した白内障手術は、単焦点眼内レンズを使用する手術に比べて手術費用が高額になります。
なぜなら、白内障手術に多焦点眼内レンズを使用した場合は自己負担額が発生するためです。
多焦点眼内レンズを使用した白内障手術には、「自由診療」と「選定療養」の2つの制度があります。それぞれの主な特徴は以下の通りです。
制度 | 特徴 |
---|---|
自由診療 | 治療に関わる全ての費用が自己負担となる制度 |
選定療養 | 治療に関わる追加費用を負担することで、保険適用の治療を併せて受けられる制度 |
選定療養で白内障手術を行ったとしても、多焦点眼内レンズの一部費用や追加検査料は保険適用外であるため自己負担額が発生します。※選定療養なし
一方、単焦点眼内レンズの場合は眼内レンズ代も含めて保険適用となります。
このように自己負担額の有無に違いがあることから、多焦点眼内レンズのほうが単焦点眼内レンズに比べて手術費用が高額になるのが一般的です。
不適合だと診断される場合がある
多焦点眼内レンズは全ての方に適しているわけではありません。
目の状態や健康状態を確認する適応検査に基づいて、多焦点眼内レンズが不適合であると診断されることがあります。
例えば、特殊な乱視がある患者様や目に他の病状を持つ方は、多焦点眼内レンズの恩恵を十分に受けられないと判断される可能性があります。
コントラスト感度が高くない
多焦点眼内レンズ使用後、コントラスト感度が高くないと感じることがあります。
これは、多焦点眼内レンズが複数の焦点を作り出すことで、特定の状況下での視界が単焦点眼内レンズに比べてやや劣ることが原因です。
特に低照明の条件下での読書や細かい作業を行う際に、コントラスト感度の低さを感じやすくなります。
しかし、白内障の症状が進行しているケースでは元々コントラスト感度が低下しているため、多焦点眼内レンズを使用したとしてもコントラスト感度が向上する場合があります。
手術前にはこれらの点を考慮し、日常生活での影響を医師と十分に話し合うことが重要です。
ハロー・グレアが発生することがある
多焦点眼内レンズを使用した方の中には、手術後のハロー・グレアが気になってしまう場合があります。
光の乱反射現象は多焦点眼内レンズの特性上、避けられない副症状の1つです。ハロー・グレアは主に以下のようなシーンで発生します。
- 夜間運転時
- 暗い環境での明るい光源の使用時
- 日中の強い日光下
ハロー・グレアは手術後に徐々に減少する傾向にありますが、一部の方はこの副症状が持続する可能性があります。日常生活に支障をきたす場合は、レンズ摘出の再手術が検討されます。
多焦点眼内レンズの利点|単焦点眼内レンズとの違い
多焦点眼内レンズと単焦点眼内レンズは、白内障手術において使用される2つの主要な眼内レンズです。
これらの眼内レンズは、白内障の除去と視力の回復を主な目的としていますが、機能と視力回復の質において重要な違いがあります。
ここでは、多焦点眼内レンズの利点や種類、単焦点眼内レンズとの違いについて解説します。
多焦点眼内レンズの利点
多焦点眼内レンズの最大の利点は、遠方視と近方視の両方の回復が見込める点にあります。多焦点眼内レンズを用いることで、白内障の手術時に老眼の矯正を行うことが可能です。
読書やパソコン作業、運転といったさまざまな活動が視力矯正器具なしで行えるようになります。
また、多焦点眼内レンズには多くの種類が提供されており、症状に合わせて眼内レンズを選択できる点も利点の1つです。
多焦点眼内レンズの種類
多焦点眼内レンズはさまざまな種類があり、それぞれが特定のニーズに対応しています。
これには、二焦点レンズ、三焦点レンズ、さらには連続焦点レンズなど、高度な技術を備えたレンズも含まれます。
多焦点眼内レンズの主な種類は以下の通りです。
- Clareon PanOptix(クラレオンパンオプティクス)
- Tecnis Synergy(テクニスシナジー)※当院はテクニスシナジーのみ
- TECNIS symfony(テクニスシンフォニー)
- TECNIS Multifocal (テクニスマルチフォーカル)
特に連続焦点レンズは遠距離、中距離、近距離の全範囲でクリアな視界を確保します。ライフスタイルや視力に基づいて、適切なレンズを選択することが大切です。
単焦点眼内レンズとの違い
単焦点眼内レンズと多焦点眼内レンズの主な違いは、提供する視力の範囲にあります。
単焦点レンズは主に1つの固定された距離に焦点を当てることで、遠方視または近方視のいずれかを改善します。
この性質上、患者様は車の運転時や読書や細かい作業をする際もしくは日常的にも、別途メガネの利用が必要になります。
一方、多焦点眼内レンズは遠・中・近の幅広い範囲をカバーすることで、さまざまな距離で物を見る際により自然な視力を体験することができます。
この違いにより、多焦点眼内レンズは日常生活での視力矯正器具に対する依存を減らし、より自由で活動的なライフスタイルをサポートします。
まとめ
多焦点眼内レンズが向かない人・向いている人の特徴、白内障手術の注意点について解説しました。多焦点眼内レンズが向かない方の主な特徴は以下の通りです。
- 強い乱視がある
- 他の目の病気がある
- 見え方に対して神経質
- 夜間に運転することが多い
- 白内障がほとんどない
あくまでこれらの特徴は一例であり、症状によっては多焦点眼内レンズの恩恵を受けられる可能性もあります。
適切な治療法を見つけるためにも、まずは主治医への相談をご検討ください。
深作眼科では、最新型の多焦点眼内レンズを使用した白内障手術を提供しております。裸眼で見るその快適な視野に大変ご満足いただいておりますので、多焦点眼内レンズを用いた手術を検討中の方は、ぜひ一度ご相談ください。